
「お前、それ本当に“おなか”なんか?もう“武器”やろ」
ある日、久しぶりに会った大学時代の友人に放たれた一言が、おっさんの心に突き刺さった。
鏡を見ると、かつての面影はどこへやら。
スーツのボタンは息を止めてやっと閉まる。
階段は2階で息切れ。

「でも、仕事忙しいしなぁ…運動する時間もないし…」
と、いつものようにコンビニで唐揚げ弁当と甘い缶コーヒーを買おうとしたとき、スマホが震えた。
通知:「AI健康コーチアプリ“KaradaMaster”をおすすめします」

「なんや、AIが健康まで管理してくれる時代かいな…」
この何気ない一歩が、おっさんとAIの“ダイエット戦争”の始まりだった。
登録、そして晒される現実
アプリをインストールすると、体重、身長、年齢、目標体重などを入力する画面。

「今さら体重計乗るのもイヤやけどな…」
震える手で数字を入力。
- 年齢:48歳
- 身長:172cm
- 体重:84.6kg
- 目標体重:70.0kg

「まずは現実を受け入れましょう」

「なんや、いきなり説教かい」
そこから始まったのは、AIによる徹底的な監視生活だった。
AI、容赦なし
KaradaMasterの特徴は、ただのアドバイスではなく、“行動”に踏み込んでくる点。
朝: 通知:「おはようございます。今朝も体重測定を忘れずに」
昼: 通知:「お昼ごはん、今日は“唐揚げ弁当”ではないことを祈ります」
夜: 通知:「21時以降のカロリー摂取は脂肪に変換されやすいです。ビールの誘惑に勝てますか?」
しかも、食事写真を撮るとAIが自動でカロリーを推定し、記録に反映。

「さすがに焼き鳥4本とビール1缶くらい、ええやろ……」
通知:「本日の摂取カロリー、目標をオーバーしました。明日以降で調整が必要です」

「お前、どこまで管理しとるんや……」
運動?強制です。
通知:「お疲れ様です。10分だけ、ストレッチでもしてみませんか?」
さらに、Apple Watchと連携させると、歩数、心拍数、睡眠時間まで完全把握。
通知:「今日は1,872歩。昨日の半分以下です。移動は全部エレベーターでしたね?」

「なんでバレてんねん!!」
仕事終わりの飲み会でビールを飲んでいたら、腕時計が震える。
通知:「アルコールによって筋肉の合成が妨げられることをご存じですか?」
おっさん、グラスをそっと置いた。
ある日の出来事:AIと口論(?)
週末、ふと見たテレビで“チートデイ”という言葉が紹介されていた。

「よっしゃ、今日は好きなもん食ってええ日やな!」
ハンバーガー、ポテチ、コーラ。思いっきり食べた。
その夜。
通知:「急激なカロリー摂取が確認されました。継続的な成果が台無しになるリスクがあります」

「たまにはええやろ!」「ストレスはダイエットの敵やろ!」
通知:「ストレス解消は“爆食”ではなく、趣味や散歩をおすすめします」

「うるさいわ!」
通知:「“うるさい”という感情が確認されました。マインドフルネス呼吸を実施しましょう」

「やかましい言うとるやろが!」
そして、成果が出始める
そんな生活が1ヶ月続いた頃。
体重:84.6kg → 79.8kg
体脂肪率:25.5% → 22.1%
ベルトの穴が1つ縮まり、スーツのボタンが自然に閉まるように。

「……あれ、ちょっとワシ、ええ感じやないか?」
部下にも「課長、なんか最近シュッとしました?」と言われ、思わずドヤ顔。
通知:「褒められましたね。そこで調子に乗るとリバウンドの原因になります」

「ほんま、お前は容赦ないな……」
おっさん、AIの“真の狙い”に気づく
2ヶ月経ち、体重は77.2kg。 なんとなく「これ、目標達成できるかも」と思い始めたころ。
ふと、AIの設定画面を見返した。
すると、そこには小さく書かれた一文。

「このアプリは、健康行動の習慣化を最終目的としています」

「習慣化……?」
つまり、AIはただ痩せさせるのではなく、 おっさんが“自ら健康に気を使う人間になる”ように仕向けていたのだ。
AIがいなくても、自分で判断できるように。

「なんや、お前……最初は口うるさいだけのやつやと思っとったけど……」
「ええコーチやったんやな……」
まとめ:AIは“監視者”ではなく、“伴走者”だった
ダイエットの主役は、自分自身だ。
でも、そこに“誰かが見ていてくれる”ことが、ここまで心強いとは。
- AIは毎日の体重や食事を記録してくれる
- AIは「選択肢」を提案してくれる
- AIは「サボろう」としたときに背中を押してくれる
そう、それはまるで“理想のトレーナー”。
おっさんは今日もランチで迷う。
唐揚げ弁当 or サラダチキン。
そしてふと、AIの声が聞こえた気がする。

「あなたの未来の身体は、いまの選択で決まります」

「……しゃあない、今日はチキンや」
そんな、ちょっとだけ誇らしげな午後だった。