
「おいアレクサ、ワシのこと無視すんなや。」
ある日、おっさんの家にやってきたのは——
話しかけるだけで家電が動くという未来の機械「スマートスピーカー」。
便利なはずだった。でも、彼らの関係は最初からギクシャクしていた。
スマートホーム導入のきっかけ

「声だけでテレビも電気も動くんやて!未来やなぁ!」
家電量販店の実演販売を見て、思わず購入。
リビングのど真ん中に置かれたそれは、黒くてつるんとした円柱型。
家族にも「お父さんがITに目覚めた」とちょっと尊敬された。
でも、地獄の始まりはここからだった。
第1戦:認識してくれへん問題

「アレクサ、電気つけて」
……シーン。

「アレクサ? 聞こえてる?」
……シーン。

「アーレーークーサーーー!!」

「大きな声出して、近所迷惑やでっ!」
第2戦:イントネーション問題

「アレクサ、“米津玄師”かけて」
「“米つき音師”は見つかりませんでした」

「ちゃう、よねづけんし!!」
「“世熱剣士”は対応しておりません」
おっさん、怒りのリモコン操作に戻る。
第3戦:やたら丁寧問題
ようやく認識してくれたと思ったら──
「はい。照明をオンにします。ご希望に沿えて嬉しいです」

「別に嬉しないやろがい!」
口ごたえはしないが、なんかイラっとくる。
そしてなぜか、家の中での地位が下がっていくおっさん。
第4戦:勝手に予定管理問題

「明日の午後3時、打ち合わせな」
「明日15時、打ち合わせを追加しました」
……翌日
「お知らせです。3時から“おっさんのうたた寝タイム”が予定されています」

「それ、予定ちゃう! ワシの自由時間や!」
そして和解へ
怒って、叫んで、スピーカーに背を向けた夜。
ふとつけた電気を消し忘れて布団に入ったおっさん。

「アレクサ、電気消して……」
「はい。おやすみなさい」
一瞬の沈黙のあと、部屋が暗くなった。

「……なんや、ええやつやん。」
それ以来、おっさんは少しずつ心を開き始めた。
おっさん流・スマートスピーカー使いこなし術
- 機械のイントネーションに合わせる
- 関西弁を封印し、「標準語おっさん」に変身する必要あり。
- 怒鳴らない、敬意を払う
- 声のボリュームより、言葉の選び方が大事。
- ツンデレに慣れる
- 時には無視されるが、それも愛嬌と受け止めよう。
まとめ:スマートスピーカーも、家族の一員
最初はケンカばかりだったが、今や「アレクサ」は家族の一部。
BGMを流したり、タイマーをセットしたり。
おっさんの生活を、静かに支えてくれる相棒となった。

「ワシとAI、最初はすれ違い。
でも、今じゃ電気より心が灯る存在や」
──おっさん、またひとつテクノロジーと和解する。