「最近の若いもんは何考えてるか分からん」
そんなセリフをつぶやく中間管理職のおっさん。
かつては背中を見せればついてきた時代も、今は通じない。
悩みの種は部下のやる気、そしてモチベーション管理。
そこで、おっさんは一念発起。
「AIに相談してみよう」と立ち上がった——
果たしてAIは救世主となるのか、それともただの電子辞書なのか。
奮闘するおっさんの挑戦が始まる。
やる気の出ない部下たち
ここ数年、部下との距離に悩んでいた。
指示を出しても「はーい」と返事はいいが、成果が出ない。
会議で発言を求めても、うつむくだけ。
飲みに誘っても、「今日はちょっと…」。
かつてのように、夜の赤ちょうちんで語り合うことも減った。

「どうすれば部下のやる気が上がるのか…」
そんなとき、社内の若手が何気なく言った一言がきっかけだった。

「ChatGPTって知ってます? なんでも答えてくれるAIですよ」
AI、はじめまして
その晩、意を決してAIと対話してみた。

「部下のやる気が出ないんだけど、どうしたらいい?」
ChatGPTはすぐに返してきた。

「部下のモチベーション向上には、共感と適切なフィードバックが重要です。目標設定はSMARTに行い、成果を小まめに認識することが推奨されます。」

「SMART? なんだそれは…」
調べてみると、
Specific(具体的)
Measurable(測定可能)
Achievable(達成可能)
Relevant(関連性)
Time-bound(期限付き)
という目標設定の考え方らしい。

「ふむ…理屈は分かった。でも、それを部下にどう落とし込めばいいんだ?」
おっさん、AIをカスタマイズする
翌日、思い切って部下との1on1を実施。
その準備として、AIに相談した。

「部下の山田(仮名)は控えめで自信がなさそう。どう接すればいい?」
AIは提案してきた。

「傾聴姿勢を大切にし、まずはポジティブな点をフィードバックしましょう。その上で、小さな目標設定と成功体験を与えてください」
おっさんはノートにメモを取り、実践してみた。

「山田くん、先月の資料、よく工夫されてたね。特にあのグラフ、分かりやすかった」
山田の表情がわずかに明るくなった。

「今月は、プレゼンを一緒に作ってみないか?」
少し戸惑いながらも、うなずいた。

「よし、AI、やるじゃないか…」
AIの限界、おっさんの気づき
順調かと思われたある日、AIに頼りすぎた結果、逆効果となる出来事が起きた。

「最近、話し方がマニュアルっぽいんですよね」
若手の一言に、おっさんははっとした。

「もしかして、AIの受け売りがバレてる…?」
人間関係はデータだけで動かない。
テンプレートでは通じない“間”や“空気”もある。
AIはアドバイスしてくれるが、最終的に部下と向き合うのは自分自身なのだ。
AIとの共存時代を生きる
おっさんはAIをツールとして使うスタンスに切り替えた。

「正直、AIだけじゃダメなんだ。だが、俺一人でも限界がある。なら、うまく補完し合えばいい」
部下ごとにメンタルタイプを分析し、AIとディスカッションした内容をもとに、自分の言葉で話すようにした。
雑談力も磨いた。
趣味や休日の過ごし方、ちょっとした冗談。
部下が少しずつ心を開いていくのが分かった。
AIは“正解”をくれるが、“関係性”は築いてくれない。
おっさん、未来を見据える
数か月後、営業部は全社でもっとも安定したチームへと成長していた。
上司と部下の間に流れる“安心感”は、AIと人間が協力して築いたものだった。

「AIにやる気を出させてもらうんじゃない。AIを使って、俺がやる気を引き出すんだ」
そう語る表情には、かつての迷いはなかった。
AIとの共存は、管理職おっさんにとっても、未来への希望なのかもしれない。